科学・技術と倫理 SYLLABUS(暫定版)
伊藤憲二
平成22年度前期
金曜日 13:00-16:00
(ただし初回は13:30から16:30;2回目と4回目は13:00-17:30)
全7回 24時間 2単位
6月4日開講
場所:共通棟セミナー室
担当者連絡先:(略)
授業のねらい
自然科学研究者のためのSTS
現代においては、科学と社会が密接に関連し、科学の急速な進歩によって、伝統的な価値基準自体が揺らぐ一方、科学研究の成果が社会に対して大きな影響を及ぼしうる。
この状況においては、科学者は単に科学者集団内の倫理規範にのみ従って研究に従事するだけではなく、変化する社会と価値観のなかに自らの研究を位置づけ、自らの研究に関して責任ある倫理判断を下すだけの社会と科学との関係についての理解をもつことが望ましい。
このように科学研究自体をメタな立場から捉え直しつつ、科学研究に従事するような、いわば再帰的科学者(reflexive scientist)を養成することがこの授業の目標である。
とくに、生命共生体進化学専攻の「科学と社会」の入門と、副論文執筆のための指導を行う。
対象・必要条件
生命共生体進化学専攻の生命系の大学院生を主たる対象とする。ただし、科学社会論専攻の大学院生の履修も認める。
他専攻・他大学の履修・聴講希望者はあらかじめ相談すること。
全学科目「科学・技術と社会」を履修していることを前提とするが、かならずしも必須ではない。
取り上げる映画は英語ができるほうが良いものがあるが必須ではない。
日本語の読み書きができることが望ましい。
教科書(READING ASSIGNMENT)
加藤尚武『現代倫理学入門』講談社, 1997.
古川安『科学の社会史』南窓社, 2000.
ハリー・コリンズ、トレヴァー・ピンチ『迷路のなかのテクノロジー』化学同人, 2001.
中山茂『科学技術の国際競争力』朝日新聞社, 2006.
広重徹『科学の社会史』岩波書店
松本三和夫『テクノサイエンス・リスクと社会学』東京大学出版会, 2009.
ローリー・アンドルーズ、ドロシー・ネルキン『人体市場』岩波書店, 2002.
小松美彦『死は共鳴する』勁草書房, 1996.
これらの教科書は、大部分、図書館に4部ずつ入る予定であるが、どれも購入する価値のある本である。
他に、課題読み物として、論文資料等を配布する週がある。
成績評価
・授業参加60%,期末の持ち帰り試験(レポート)40%
授業について
・ 通常一回3時間の授業を学期内に7回行う.映画の週はそれにプラス。2単位.
・ 講義も行うが、ディスカッションを中心にする。
・ 教科書の他、Reading assignmentsを配布するので、以下に指定したとおり、授業までに読んでくること。
・ その他、講義資料を配布する。講義のノート等は取る必要はない(とってもよい)。
・ 希望があれば申し出ること。少人数なので、テイラー・メード方式が可能。
レポート(期末試験)について
期末形式は持ち帰り形式(レポート形式)で行う。試験問題は以下の通り。
1.この授業やその他の勉強を通して、科学と社会に関わる問題で自分の関心のあるものをひとつ選び、その問題について何がどう問題で、なぜそれが重要で、あるのか説明せよ。
ただし、科学と社会に関わる問題とは、たとえば、科学や技術がその問題の発生の原因だったり、その問題の調査や解決に必要でありながら、その問題が社会的に影響をもち、かつその問題の解決が科学や技術だけでは(あるいは科学者・技術者の共同体内部だけでは)原理的にできなかったり、困難であったりするような問題をさす。
なお、できれば将来副論文に発展するテーマが望ましい。したがって、テーマはよく考えて選び、副論文のテーマを考えながら決めることを推奨する。
2.上記のような問題に対して、どのように取り組めばよいと思うか、考察して、述べよ。たとえば、可能な解決案をいくつか提案し、それぞれのメリット・デメリットと、実現可能性を論じてもよいし、あるいはその問題に対して可能な解決策がないことを論じてもよいし、その問題を解決するために必要な調査を論じたりしてもよい。
答案の分量は全体でA4、3枚から5枚程度とする。
締切は9月末日とする。
授業に関する注意
・ シラバスの内容は、変更することがある。
・ 少人数の双方向的な授業を行うため、積極的な発言を奨励する。
・ 授業の妨げになる行為(携帯電話や私語)は厳禁とするが、それ以外の行為は何をしても良い。飲食物の持ち込みは可とする。
授業予定
(種々の事情により、開講日を変更することがある)
第一部:概論
JUNE 04 MEETING 1 なぜ科学技術社会論か
・序論:なぜ科学技術社会論か
・文科系の学問への入門(資料調査法および論文執筆法)
・倫理的推論の初歩(自由主義、共同体主義等、倫理的基礎概念)
Reading Assignment: 加藤尚武『現代倫理学入門』講談社, 1997.
JUNE 11 MEETING 2 科学史、科学哲学、科学技術社会論の概要
・科学史 in a nutshell
・科学哲学の基礎概念
・科学技術社会論の十大問題
Movie: The Day After Trinity
Reading assignment: 古川安『科学の社会史』南窓社, 2000から序章、1−3章、5-6章、8-10章;広重徹『科学の社会史』序章、1章;『迷路のなかのテクノロジー』から、カンブリアの羊飼いと、エイズの章
第二部:科学と社会
Jun18 JSPS 国際コミュニケーション(総研大レクチャー)のため、休講:http://www.soken.ac.jp/news_all/1239.html
JUNE 25 MEETING 3:競争的科学
・20世紀半ばの社会における科学の位置の変動
・戦争と科学、国家と科学、科学技術の国際競争
Reading Assignment: 古川安『科学の社会史』11,12章;広重徹『科学の社会史』から5章、12章、終章;中山茂『科学技術の国際競争力』
Discussion : Oppenheimer’s Tragedy (前回の映画についての討論)
JULY 02 海外出張のため休講
JULY 09 MEETING 4 科学社会学、研究組織論と研究者養成
・科学社会学
・科学の組織、制度、文化
・大学と研究所
・大規模システムとリスク
・研究者養成
Reading Assignment: 松本三和夫『テクノサイエンス・リスクと社会学』第1章から第4章まで;『迷路のなかのテクノロジー』から、チャンレンジャー事故;研究者養成(小林信一論文、前の週に配布);
Discussion: 博士号取得者の就職問題
Movie: GATTACA
第三部:生命倫理と環境倫理の事例
JULY 14 MEETING 5 遺伝子と社会(先導科学プログレスのため日程変更)
・遺伝子組換え技術とアシロマ会議
・ヒトゲノムと人間的価値
Reading Assignments:アンドルーズ&ネルキン『人体市場』;ワトソンのGATTACA評。
Discussion 遺伝子をめぐる倫理の諸問題(映画とReading assignmentsについての討論)
JULY 23 MEETING 6 医療と社会
(日程は予定;参加者によって調整する)
・医療倫理概説
・脳死臓器移植問題
Reading Assignments: 小松美彦『死は共鳴する』勁草書房;その他、論文・記事を前の週に配布
Discussion:脳死・臓器移植問題
JULY 30 MEETING 7 環境と倫理
(日程は予定;参加者によって調整する)
・環境倫理概説
・地域環境問題とリスク
・地球環境問題
Reading Assignments: 中西準子、鬼頭秀一、加藤尚武の文章(前の週に配布)
Discussion:地域環境問題・地球環境問題
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